まだ衰退しそうにない「格差議論」

筑摩書房 PR誌ちくま 2008年7月号 格差社会で損をしているのは誰か? 大竹文雄

日本の不平等』という学術書を〇五年に出版した私は、その格差論バブルの当事者の一人だろう。私の本の主張は、日本の所得格差拡大の要因は高齢化だ、という一番わかりやすいところだけが広く伝わった。格差拡大そのものを否定する学者だと誤解されることも多い。

確かに大竹さんは大分誤解されていると思うw
(誤解されてもしょうがない気もするがw)

もう一つ私が主張したかったことは、現在が格差社会であるというのなら七〇年代や八〇年代の日本も格差社会だったのであり、「一億総中流」こそ幻想だったということだ。日本の所得格差が低く見えたのは、まだ所得に差がついていない若者の人口比率が高かったことが原因だったのだ。その意味で、〇七年くらいから格差という論点から、ワーキングプアや貧困問題に議論の焦点が移ってきたのは正しい方向だ。不況の影響が新規学卒者や失業者にしわ寄せされるという日本社会の特徴も多くの人に認識されるようになってきた。

本当の意味での格差は、若者の間で発生してきている格差であり、問題はその対策をどうするか、という点にある。それには、教育・訓練しかありえない。もし、既得権擁護のためになされた格差社会批判が、一番大切な格差社会対策になる教育・訓練政策への資金投入を阻害するのであれば、なんのための格差社会論争だったのか、ということになってしまう。

教育・訓練は確かにそうだが、これは若者の中でも子供・学生向けの対策。すでに社会に出ている人にはもう少し深い策がいるよう思う。